大沢温泉
 大きなホテルが建ち並ぶ花巻温泉から車で南に20分程行った所に豊沢川があり、その川沿いに温泉が点在しています。この豊沢川沿いの温泉地帯を、「花巻南温泉峡」といいます。一般的には、花巻温泉の温泉宿(ホテル群)と花巻南温泉峡にある温泉宿をひとまとめにして、「花巻温泉」と呼んだりしています。
 大沢温泉は花巻南温泉峡の中ほどにあり、歴史と風格のある大きな旅館です。自炊部(湯治)と露天風呂である大沢の湯が有名で、最近は雑誌やテレビにもよく取り上げられるようになりました。写真上段左は、相田みつを氏が書いて大沢温泉に贈呈した文字だそうです。
 建物は、高級旅館の山水閣、茅葺屋根の菊水館、そして大きな木造の自炊部の3つに分かれていて、廊下や橋で行き来することができます。宿泊する人は、それぞれの建物の入口から入りますが、日帰り入浴の人は真ん中の自炊部か菊水館から入ります(ほとんどの人は自炊部から入ります)。自炊部の入口を入ると、レトロな無料休憩所(写真下段左)と大きな売店があります。休憩所には、昔の電話などが飾ってありました。

        

                  

                    

 お風呂は、館内のいろいろな所にいくつもありますが、内湯では山水閣の半露天風呂がお勧めです。自炊部から入り、右手にずっと行った所にあります。大型温泉ホテルのように広くてきれいなお風呂です(写真下段左)。内湯の外側は片面ガラス張りですが、冬以外はガラスが全部開けられて半露天風呂のようになります。大きな窓から見える川向の山の緑に癒されます。
 露天風呂では、有名すぎるくらい有名な、「大沢の湯」があります(写真上段3枚)。温泉好きな方は、テレビやポスターなどで1度は目にしたことがあるのではないでしょうか。渓流沿いにある広い露天風呂です。宮沢賢治や高村光太郎も、好んでよく訪れていました。混浴で、女性用の立派なロッカー室も横にありますが、露天風呂は太陽が燦々と当たってとても明るい所なので、日中は入りにくいかもしれません。夜や冬(湯気がすごい)でしたら、若い女性の方でも少しは入りやすいかもしれません。湯船からは、豊沢川や木造の曲がり橋、茅葺屋根の菊水館などが見えて、情緒たっぷりのお風呂です。
 曲がり橋を渡って、菊水館の内湯(写真下段右)にも入ることができます。きれいで重厚な造りの木造風呂ですが小さくて混みやすいので、ここは省略してもいいと思います。

         

                

                    

 大沢温泉のメインは自炊部で、木造一部3階建ての大きな建物です(写真上段左−写真は一部です)。建物の中は迷路のようになっていて、中を回ったり上の階に上がったりしていると、今どこにいるかわからなくなってしまいます。「こんな所に・・・。」と思うような地下っぽい所に突然お風呂があったりします。部屋と廊下はふすま1枚で隔ててあって、中からおじいさんの話し声やテレビの音がひくく聞こえてきます。たくさんの部屋が並んでいて、多くの人が湯治をしているようでした。
 長くて急な階段は、3階まで見通すことができます。深夜は静まり返っていますが、朝の6時ごろから人々が動き出します。自炊用の大きな台所、野菜や納豆を売っている売店、食堂などがあって、1つの街のような感じがしました。

         

                 

                    

 この自炊部や山水閣がある場所から「曲がり橋」(写真上段中央)を渡った対岸に「菊水館」があります。自炊部から菊水館に行く場合、下駄に履き替えて橋を渡りますが、菊水館にも専用の入口があって、車で自炊部の建物を左のほうからぐるっとまわりこむように坂を下って行きコンクリートの橋(曲がり橋とは別の橋)を渡ると、菊水館の玄関があります。菊水館は、玄関やフロント、食堂、お風呂などがある2階建ての母屋(2階部分は宿泊部屋)と、宿泊棟である茅葺屋根の長屋からできています。
 部屋は6〜8畳位のこざっぱりとした和室で、窓の近くにかわいい木製火鉢が置いてあります(温風ヒーターや鍵、テレビなどは、きちんと付いています)。窓を開けると、あたりは深い雪に覆われいて、し〜んと静まり返っていました。火鉢越しに見る冬景色はとても情緒がありました(写真上段右)。
 夜、外に出て菊水館を見たら、屋根にこんもりと雪の積もった建物から暖かい色の灯りが漏れていて、童話の中に出てくるお菓子の家のようでした(写真下段右)。